真面目な鳩井の、キスが甘い。
「やだ、かわいい」

 おもに無表情でされるがままの鳩井が。

「今日ずっとあんな感じー。晴翔、鳩井くんには甘いよねー。手がかかる子ほど可愛いってやつかなー」

 確かに甘い。

 元々お世話焼きの晴翔だけど、もし私が相手だったらもっと罵詈雑言の限りを尽くしてるはず。

 それだけ鳩井が可愛いってこと?

 鳩井最強だな。


「そういえば最後の3on3のメンバーってどうなったの?」

「晴翔、鳩井くん、尾道くん。まぁ晴翔以外のメンバーは先生の忖度入ってるよねー」


 本来バスケ部が入るべきではない3on3のメンバーに晴翔がいるのは、我がクラスにバスケ部が多すぎるせい。

 どうしても1人バスケ部が入らないといけないということで、くじ引きで晴翔がやることになったらしい。

 つまり、クラスで1番球技が苦手な2人がメンバーに入れられたのは、他のクラスへの配慮ってこと。


「ずっと晴翔がつきっきりで教えてたよ。幼稚園児の習い事みたいだった」


 は?かわいい。見たかった。


 晴翔の懸命の指導の元、愛おしいドリブルの仕方をする鳩井。

 は?なに?は?かわいいが???

 ボールに踊らされる鳩井から目を離せずニヤニヤしていると、ふいに鳩井がこちらを見た。



「!」



 そしてすぐそらした。



 …なん!?

 なんで!なんでそらす!?

 アイコンタクトぐらいしてくれたっていいじゃん!!


 ……って、しないか。鳩井はしないか、しないよね。

 それに私たちがキスフレなことは、絶対秘密だし。

 そっかそっか、それはそうかぁー。

 でも、なんか寂しいなー……


< 102 / 320 >

この作品をシェア

pagetop