真面目な鳩井の、キスが甘い。
「なんかあった?」

「うぇ!?」


 いつの間にか美愛が私の顔を覗きこんでいて、飛び跳ねた。

 美愛は『あざとくて何が悪いの?』という顔だ。


「え、なに?なにが?なにがなにが!?」

「あらら冷や汗なんか出しちゃって。絶対なんかあった系じゃんー」

「え、う、いやぁー?」

「私に隠し事できると思ってるの?ほらほらゆうてみ?全知全能の美愛様にゆうてみ?まさか、こっそり付き合いはじめちゃったとか……!?」

「んなっ、!?ない!ないない!それはない!それは!!」


 付き合っては、ない!!


「ふーん。それは、ないのかー」


 『それは』を強調して誘導尋問のように真実に近づいていこうとする美愛から、私はどうやって逃げようか必死に考えを巡らせる。

 その時だった。

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