真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ……ノアは、スーパークズックズの最低ゴミカスうんちくんだ。


 ノアと出会ったのはまだモデルとして駆け出しだった中学一年生のとき。

 緊張しながら辿り着いた初めての撮影現場で、涙目の私の前に、ノアは私と同じ中学の制服を着て現れた。

 「あ!同じ学校!?ヒナちゃんって言うの?かーわいい〜!よろしく〜」

 そう言って天使の笑顔で握手すると、当時モデルとしてすでに場数をこなしていたノアは優しく色々と教えてくれて、私の緊張をほぐしてくれた。

 イケメンでハイスペなノアといるのは夢のようで、楽しくて、ドキドキした。


「ヒナといるの楽しいなぁ。ヒナみたいな彼女がいたらいいのになぁ」


 イケメンスマイルでそんなことを言われちゃったら、


「私もノアが彼氏だったら嬉しい…♡」


 ……とか、言っちゃうじゃん?


 そしてめでたく付き合い始めた私たちは、自他共に認める美男美女カップルだった。

 美愛と晴翔にも紹介してよかったね、って祝福してもらって、これから恋愛リアリティショー的なめくるめくラブロマンスが始まるんだって、いつか『ノアヒナ』とか呼ばれちゃったりするような名カップルになれちゃうんだ、なんて。

 そんな夢を見ていた。

 それが崩れたのは付き合って一週間後、デートの待ち合わせ場所で見知らぬ女の子とキスしてるノアを目撃した時だった。

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