真面目な鳩井の、キスが甘い。
「そうだ晴翔、3on3出るのー?」


 ノアが、こちらが怖くなるほど呑気な声を出した。


「…だったらなんだよ?」


 対する晴翔は殺気をより一層強くして、ガシッとノアの胸倉を掴んだ。


「あっ、だめだよ晴翔!」


 晴翔の服を掴んで止めに入るけど、晴翔は聞く耳を持たない。

 そしてノアは、されるがままにしながらニッと笑った。


「勝負しよーよ。ヒナをかけて」


 そのニコニコした顔は、奇しくも『ヒナは三番目☆……いや、4番目かな?』と言ってのけた時と同じ顔だった。


「…はぁ?」

「僕たちが勝ったらヒナをちょうだい」


 ……は?


「えっ、やだよ。絶対やだ」

「今は晴翔に聞いてるんだよ、ヒナ」

「いやいやいやいや」


 私は意味の分からないことを言うノアに首を横にフルフルと振った。


「ヒナとは前付き合った時キスのひとつもできなかったし、やり直したいんだよねー」


 ニコッと笑うノアに、また鳥肌が立つ。


「はっ、バカかよ。誰が受けんだよそんな勝負」


 晴翔が鼻で笑ってノアから手を離した。


 あー、よかったー!

 そりゃそうだよね、やる意味がないもんね!


「えっ、もしかして晴翔自分たちが負けると思ってる?」


 ノアがとぼけた顔で言った。

 ピクッと反応した晴翔の、空気が変わった。


「誰が負けるって……?」


 晴翔さん?
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