真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ノアはふと私たちの後ろに目をやって、晴翔と同じ色のゼッケンをつける鳩井と尾道くんを一瞥した。

 そして、フッと鼻で笑う。


「あぁ、勝負したくないか。そっち、負け確っぽいもんね」


 ブチブチブチッ。


「…………あ?」


 晴翔のリミッターがキレる音。


「上等だ!やってやろうじゃねーか!!」

「待て待てーい」


 どうしてそうなるんだーい。


 美愛が「うちの子たちはなんでこんな単純なんだ…」とぼやくのが聞こえる。


「そのかわり俺たちが勝ったら金輪際日向に近づくんじゃねーぞ!」

「のった」


 睨みつける晴翔に、ノアが嬉しそうにする。


「待って待って、だめだよ、そんな勝負しなくていいよ!」


 本当に負けたらどうするの?ノアと付き合うなんて絶対いや!!

 二人の間に入って抗議する私を、


「お前は黙ってろ!!」


 晴翔が一蹴した。


「えー…」

 私の名前が出てるのに私の話を聞いてくれないー…


「ギリギリまで練習すっぞ鳩井!尾道!」


 体の周りに炎を燃え上がらせた晴翔は、踵を返してコートに向かう。

 尾道くんが「えぇ……」と涙目になるのが見える。

 だよね、とばっちりだもんね、ごめんね尾道くん……!

 そこで、無表情でそこに立つ鳩井とバチンと目があった。

< 110 / 320 >

この作品をシェア

pagetop