真面目な鳩井の、キスが甘い。
 そして始まったレナちゃんの撮影。


「レナちゃんいいね!今日も可愛いねー」


 例のごとくカメラマンが褒め言葉を並べながらシャッターを切っていく。


「んー、でもちょっと表情が硬いかなーリラックスしてー」

「す、すみません…っ」


 レナちゃんが顔を真っ赤にして泣きそうにする。


 は!出番だ!

 スタジオの端でパイプ椅子に座って静観していた私は立ち上がって、全力変顔をレナちゃんに手向ける。



「……フフッ」



 堪えきれずに笑ったレナちゃんから例のお花が舞い飛んだ。



「おー!いいねいいねレナちゃん!その調子〜!」


 カメラマンが勢いよくシャッターを切っていくと、レナちゃんの調子も上がっていって表情がどんどん良くなっていく。

 っし!と私は拳を握る。

 無事に職務を全うできた。


「やっぱあんた芸人の方が向いてるかもね」

「芸人さんってアホでもできる?」

「……無理ね」


 アホの未来は厳しい。


「じゃーレナちゃん、ちょっと大人っぽい表情いってみようか!セクシーな感じで!」


 あのカメラマン!! レナちゃんにまでセクシーを強要するなんて!

 レナちゃんは中学3年生だよ?セクシーなんて無理に決まってる!

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