真面目な鳩井の、キスが甘い。
「すっごい集中してたね!球技大会の自主練?」

「うん……波木さんはどうしてここに?」

「仕事まで時間あるからお散歩でもしよーと思ってー」


 ヘラヘラする私を、鳩井が動きを止めてじっと見る。


「?」

「……前から思ってたんだけど」

「うん?」

「波木さん、一人でフラフラ歩きまわって大丈夫?」

「えっ?大丈夫ってなにが?」

「芸能人なのに危ないよ」

 鳩井の表情は真剣そのもの。

「えぇ?あはっ、大袈裟だよーまだまだ無名のモデルだし!」

「でもファンっぽい人によく話しかけられてる」

「あ、うーんそれはそうだけどー……」


 ……ん?鳩井、私がよく話しかけられてるの知ってるの?


「街中ならまだしも、こんな人気のない道通らないほうがいいと思う。世の中には良くないこと考える人もいるんだから」


 ……わーお。

 鳩井が私にお説教してる。


「……はぁい」


 そう返事した私に、鳩井が不服そうな顔をする。


「……なんで嬉しそうなの?」

「んー?……フフッ」


 怒られてるのに笑っちゃいけないと思うけど、つい笑ってしまう。


「心配してくれてるのかなーって。ヘヘッ」


 たとえ鳩井にとっては友達相手のそれでも。

 私のことを思ってくれてるんだと思うと、嬉しくなっちゃうんだよなぁ~。


 ニヤニヤが抑えられない私に、鳩井がため息をついた。



「……してるよ。波木さんになんかあったら困る」
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