真面目な鳩井の、キスが甘い。
「っ…、」


 そのまっすぐな目が私の心臓に思い切り突き刺さって、顔がグググッと一気に熱くなる。

 ……ほんとそういうこと、サラッと言う。

 その一言が私にとってどれだけの威力を持ってるか、鳩井は知らないんだ。


 私は自分を律するためにパチン!と自分の顔を叩いた。


「痛い!」


 自分の平手ながら痛い!


「……どうしたの」

「なんでもないよぉ……」


 もーやだこの天然たらしぃ~~~!

 私は自分の熱くなった顔をごまかすために話を変えることにする。


「てか鳩井が練習って意外!あんまりイベントごとに熱くなるタイプじゃないと思ってたよー」


 晴翔が燃えてるからそれに付き合ってくれてるんだろうな。やっぱ優しいね、鳩井。


「……」


 鳩井が黙ってしまった。

 しまった、ちょっと答えづらかったかな。なにか別の話題……



「……あの、ノアって人」


 鳩井が静かに口を開いた。

 その目はゴールポストにまっすぐ向かっていて、さっきと同じようにボールを構えてる。


「ん?」

「……あの人に負けるのは、なんか嫌だから」

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