真面目な鳩井の、キスが甘い。

「……そっか」

「うん」



 ねぇ、鳩井。

 そんなこと言って大丈夫?



 鳩井が少し屈んで、シュートを放った。

 ゴールポストには全然及ばず下に落ちるボールを、無表情の鳩井が小走りで取りに行く。

 近くのベンチにある鳩井のバッグの上には、3on3に関する本が何冊も置いてあるのが見えた。


 負けるのが嫌って……

 私、自意識過剰だから、私をノアにとられるのが嫌って意味にとっちゃうかもよ?

 ほっぺのキスも、心配してくれるのも、一生懸命練習してるのも

 鳩井からしたらただのうっかりで、ただの優しさなのかもしれないけど

 もしかしてって、思っちゃうよ




「……鳩井」




 私の小さすぎる声は、一生懸命ボールを追う鳩井に届かない。


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