真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……」



 だよね。わかってた。

 でも寂しいよ。ぐすん。

 本命からはこの塩対応、そして自分の力の及ばないところで大嫌いな元カレのものにされそうになってる。

 なんですかこの状況は!私がいったいなにしたってんですかい!えーん!


「やめて……っ、私のために争わないで!」


 ……今、裏声で言ったのは私じゃない。


「2人が争ってる姿なんて、見たくないよ……っ」

「…美愛ちゃん。勝手に乙女チックなアテレコやめてー」

「運命の一戦ですが、お気持ちいかがですか!波木さん!」

 美愛が球技大会のしおりをくるくる巻いてマイクに見立てて私の口元に向ける。

「ええ、最低の気分です」

「ほうほう、それは興味深いですねぇ」

 そういう美愛は、とても楽しそうだ。





「じゃあ始めるぞー。両者、礼!」

 先生が笛をピッ!と鳴らしてメンバーたちが頭を下げた。

「っしゃす!!」

 そしてピリピリとした緊張感の中、試合が始まった。


< 127 / 320 >

この作品をシェア

pagetop