真面目な鳩井の、キスが甘い。
 攻守交替して、今度は晴翔がシュートを決めようとする。

 だけどノアチームのプレッシャーが強くて思うようにはさせてくれず、晴翔は苦し紛れに尾道くんにパスを出した。

 それを尾道くんが取りこぼしてしまい、ノアチームのゴリさんの手に渡ってしまった。

 取り返しに走るも、残念ながら得点を決められてしまう。

 あっという間に2-0。


 え……やばくない?このペース、マジでやばくない??


「ごめん……っ」

「気にすんな尾道」


 涙目になる尾道くんの肩を叩いて慰める晴翔に、ノアがまた挑発的な顔を向ける。


「あんまりクラスメイトいじめないほうがいいんじゃない?はやく終わらせてあげようよ。もうヒナが僕のものになるのは決定事項なんだし、さ」


 はい波木、鳥肌たちました。


「あぁ!?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!」


 簡単に挑発にのってしまった晴翔がノアに掴みかかる。

 ほんと、ふざけてる。

 でもノアの言う通り、見てられない。

 尾道くんの泣きそうな顔を見てると、もう早く終わらせてあげたほうがいいんじゃないかと思う。

 ノアのものになるのは絶対に嫌だけど、そんなことを思っちゃうくらいには、希望を見いだせない。


「澤くん」


 私はその時

 その日はじめて、鳩井の声を聞いた。
< 129 / 320 >

この作品をシェア

pagetop