真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ……?

 なんだろう、何か言いたそうな感じだ。

 てかそんなじ…っと見られると軽率にドキドキしちゃいますけど…


 私たち以外のみんなは晴翔と美人な先輩の行く末を見守るのに夢中で、私と鳩井がアイコンタクトをとってることなんて気付きもしない。


 しばらく私を見ていた鳩井は、おもむろにタオルを持つ手の人差し指を立てた。

 その人差し指は体育館の出入り口のほうを差してる。


 ?

 出入り口は特に変わった様子はない。


 鳩井は私と出入口のほうを交互に見てから、尾道くんに何か言付けして立ち上がった。

 そしてそのまま出入り口のほうへと歩いていくと、また私のほうをちら、と見る。


 ……ついてきてってこと?


「……美愛。トイレ行ってくる」

「うぃ」


 晴翔を見守るのに必死な美愛の短い返事を聞いて、私は鳩井が消えた外のほうへと小走りで向かう。
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