真面目な鳩井の、キスが甘い。
「え……鳩井……?」


 私の手を引いて準備室の中に引き込んだ鳩井が、相変わらずキレイな切れ長な目で私をとらえる。


「……」


 鳩井はいつもの無表情で後ろ手に鍵を閉めると、そのまま何も言わずに私との距離を詰める。


「っ、え?な、なに、どした?」


 なんだ?なんだ?なんか怒ってる?

 思わず後ずさると、腰ぐらいの高さの棚にぶつかった。


「……」


 そして鳩井は、私を囲むようにして私の後ろにある棚に両手をついた。

 ぐっと距離が近くなって、触れてないのに鳩井の熱に包まれる。



「……っ」



 ちっかい……っ!



 鳩井の意図も分からないまま、顔の表面温度はがどんどん上がっていって、心臓の音はドクドクと大きく速くなっていく。

 鳩井は汗をかいた影響か前髪が分かれていて、端正な顔立ちがあらわになっていて、それが妙にセクシーで。

 そこにフワリと香る、シトラスに混ざる鳩井の汗のにおい。

 ドキドキは加速していくばかりで、クラクラしてくる。


「……ごめん」


 突然、目の前のセクシーイケメンに甘く低い声で謝られたので、思考停止する。


「ちょっと多めに貰う」


 鳩井はそう言って私の頬に手を添えて、顔を近づけた。


「……ぇ」


 そして、は、と口を開いた鳩井に、

 唇を食べられた。
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