真面目な鳩井の、キスが甘い。
「ごめんね、負けちゃって。僕も本当に悲しかったよ。でもさ、両想いだったら試合なんか関係なくない?」

「……は?え……は??」


 スーパーポジティブすぎて逆に尊敬してきた。


「……ヒナ」


 ノアが私の頬に両手を添えて、ぞわわっと鳥肌が立ち上がる。


「涙が止まる魔法のキスをしてあげる」


 ノアがキモすぎたおかげで涙は止まっていたのだけど、キモキモすぎてまた別の涙が込み上げてくる。


「やだ!やだやだ離して!はーなーしーてーーー!!」

「素直じゃないなぁヒナは。恥ずかしがらなくていいんだよ?」


 そう言ってノアがグッと顔を近付けた。


「っ……、」



 やめて

 本当にやだ、絶対にやだ

 したくない


 私は、鳩井としか、










「うわ!!」




 !?




 突然訪れた衝撃とともに、ノアがはじかれるように私から離れた。




「ハァッ、ハァッ、ゲホッ」

「え……」




 ノアを押したその人が、苦しそうに息を乱しながら私の手首を掴んだ。


「っ……、」


 その目はまっすぐに私を捉えて逃してくれない。


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