真面目な鳩井の、キスが甘い。
 そして鳩井は、私を引っ張って走り始めた。


「は!?晴翔ならともかくお前って……ちょっ、あたたた腰が…腰がぁ!!」


 腰を痛めたらしいノアが私たちに向かって手を伸ばしてるけど、鳩井は足を止めずにむしろ速度をあげた。



「っ……、鳩井……っ」



 私の呼びかけに鳩井は答えることなく、背中を向けたまま走っていく。



「ねぇ……」



 もう駄目だよ



「鳩井ぃ……っ」



 こんなことされたらもう……!






 そして私たちは、締め切られている保健室に合鍵であけて中に入った。



「ハァッ、ハァッ、ごめ、ちょっと待っ……ハァ、ハ……ゴホッ」



 鳩井はフラフラとしゃがみこんで懸命に息を整える。

 そんな鳩井の姿に、愛しさが込み上げる。



「鳩井……ごめん……っ」



 またボロボロ泣き始める私に、鳩井がギョッとする。



「ごめん私……っ、だめだぁ」


「……?」



 鳩井が立ち上がって、滝のように涙を垂れ流す私を見る。



「鳩井、ごめん~~~っ」




 そして、




「鳩井が好きだぁ……!」




 あふれ出した。


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