真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……波木さん」



 鳩井が俯きがちに、控えめに私の人差し指に触れる。

 その耳は真っ赤に染められて、触ったらやけどしそうなほど。



「さっきの人とか、澤くんとか……波木さんに触れようとする人がいるとモヤモヤするし、波木さんの笑顔見ると……癒される。放課後も週三日だけじゃ足りない。本当は毎日だったらいいのにって思ってた。波木さんが美味しく感じるのも、波木さんがいると発作が起きやすいのも、多分……波木さんに恋、してるからだと思う」



 鳩井が俯いたまま指を掴む手にキュッと力を込めた。

 だんだんと理解してきて、触れた指先からブワッと身体中に熱が駆け巡る。



「……でも、鳩井いっつもすぐ帰っちゃうもん」

「それは……ずっと側にいたら自分を抑えられるかわかんないし……」

「えぇ…?」


 どういうこと……?


 鳩井がコホン、と咳払いして顔をあげ、熱っぽい目で私の目を見た。


「とにかく……そういうこと、なんだけど」

「……っ」


 夢かな

 自分に都合のいい夢なんじゃないかな


「……もーなにこれー……?どうしよー」


 さっきとは違う、嬉しい涙があふれ出す。


「…………どうしようね」



 また泣き始める私に鳩井は愛おしそうな目を返して、指で優しく涙をすくってくれる。

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