真面目な鳩井の、キスが甘い。
「確かに私、うるさいかもしれないけど!ウザいかもしれないけど!さすがにもう別れ話なんて時期ソウソウだよ!絶対イヤ!!」


 私は鳩井の腰にぎううう、と強めにしがみついた。

 すると頭の上から鳩井の小さなため息が聞こえてきて、それにまた小さく傷ついては、再び目尻に浮き出てくる悲しみの粒。

 ねぇ、二日だよ?たったの、二日。

 それでおしまいなんてやだよ、やだやだ、絶対やだ!

 絶対絶対、別れたくない!!
 

「……誰も別れ話なんて言ってないでしょ」

「!」


 ポンと頭に手が添えられて、優しくなでられた。

 不安と悲しみで黒々と占拠されていた胸に、じわぁ、と熱いものが広がる。


「……ほんと?」


 自分でも信じられないぐらいか細い声が出た。


「うん……それと時期ソウソウじゃなくて時期尚早(しょうそう)


 鳩井の優しい声音に、ひどく安心する。

 
「じきしょうしょ……じきそうしょう?」

「尚早」

「そ、しゅ……しょ、しょうす、そ……」

「ふ」


 ちら、と見上げると顔を横に背けて左側の口角をあげる鳩井。


「言えなさすぎ」

「……」
 
 
 はーい。

 ボロ雑巾のようになっていたハートが一気にハッピネスで満たされちゃいました、単細胞こと私です。


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