真面目な鳩井の、キスが甘い。
 まるでもてなす気のない私は新品同様の単語帳を取り出して1ページ目を開いた。

 前回のテスト範囲分もやったほうがいいよね……ひぇー、すごい量~


優那(ゆな)さんはー?」


 晴翔は食器棚からグラスを取り出して、冷蔵庫のフルーツ漬けを見つける。
 

「仕事ー」

「へー。相変わらず忙しそうだな……つかなに勉強してんの」

「試験前ですから」


 ここぞとばかりにキリッとしてみせると「ハッ」と鼻で笑われた。


「お前いつも一夜漬けじゃん」

「今回は真面目に勉強すると決めたの」

「真面目に?日向が?無理だろ」


 言いながら晴翔は楽しそうに笑ってグラスに氷をカランカランと入れた。

 どうやら私の分のフルーツソーダも用意してくれている。


「無理じゃないもん!少しでも鳩井の隣が似合う女になりたいのっ!」

「は?鳩井?なんで鳩井」


 晴翔は背中を向けてキッチンに立った。

 あ、そうだ。晴翔に言ってなかった。


「付き合い始めたんだよー!鳩井と!」


< 177 / 320 >

この作品をシェア

pagetop