真面目な鳩井の、キスが甘い。
 シュワシュワと炭酸がはじける音、氷がカランッとグラスをかすめる音。

 外ではミンミンと蝉が鳴いている。


「…………へー」

「へーってそれだけかーい」


 私と鳩井って結構なビッグニュースだと思うんですけど。

 リアクション薄すぎじゃない? 鳩井じゃあるまいし。


「……お前、鳩井が好きだったの?」

「フヘヘッ。まぁね~。やっぱ意外ー?」

「……」


 ん?反応がない。

 ちょっと心配になった私は単語帳から晴翔の方に目を向ける。

 見ると、晴翔の手からグラスに注がれたソーダが、あふれ出している。
 

「!?晴翔!こぼれてる!!」

「え?あ、」


 私は慌てて台拭きを引っ張り出してボーっとする晴翔にひとつを渡し、二人で溢れたソーダをふきんに吸い込ませる。

 
「もーどうしたの、ボーっとして!」

「……いや、別に……」


 濁った返事をする晴翔の顔を窺い見ると、なにやら目を泳がせてテンパっている。


「晴翔……?」


 明らかに様子のおかしい晴翔を呼ぶと、ハッとした晴翔が後ずさった。


「……あ、ごめん、ちょっと俺……か、帰るわ」

「え?」


< 178 / 320 >

この作品をシェア

pagetop