真面目な鳩井の、キスが甘い。
「澤くん」


 鳩井が出口に向かおうと引っ張る私を引き止めて、晴翔の前で止まった。



「それでいいの……?」

 

 鳩井の意味深なセリフに、私は首を傾げる。


 晴翔は答えることなく鳩井をまっすぐに見て、


 ドンッ。


「うっ」


 鳩井の華奢な肩にグーパンを入れた。


「あ!?こら!!」


 後ろによろけた鳩井を、慌てて支えに行く。


「何すんの晴翔!」


 反抗期だからってしていいことと悪いことがあるよ!!


 
「……ちゃんと責任とれよ、鳩井」



 そう言った晴翔の目が、声が、真剣そのもので。

 瞬時に介入しちゃいけない空気を感じた私は、隣にいる鳩井が無言でうなずくのを呆然と眺めた。



「……帰ろ、波木さん」


 





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