真面目な鳩井の、キスが甘い。
「怒られちゃうかもしれないけど、一度雑誌に載っちゃったら取り消せないし……今ならまだ間に合うと思う!戻ってお願いしに行ってくるよ!」


 そう言って立ち上がろうとしたところを、鳩井に手首を掴んで引き留められる。


「……なんで?」


 信じられない、という目をする鳩井に、私はニッととびきりの笑顔を向けた。


「わたし、鳩井の彼女だもん。彼氏の平和な生活を守るのも、彼女のつとめかなーって!フフッ」


 うん。これでいい。

 鳩井の幸せが私の幸せ。

 せっかくキスフレから昇格したのに秘密なんて、ずっと憧れてたカップル特集のチャンスを逃すなんて……全然気にしないって言ったら嘘になるけど。

 鳩井になにかを我慢させるのは、嫌だ。

 鳩井が苦しいと、私も苦しい。

 その証拠にほら、撮影なしにしてもらおうって決めた今、さっきまで胸にあったモヤモヤがなくなっちゃってる。

 もっと早く気付けばよかったな。


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