真面目な鳩井の、キスが甘い。
「ね。大丈夫、スタッフさん達にはうまーく言っておくからさ!みんな仲良しだし、許してくれると思う!」


 正直に言うと、十中八九、許されない。

 許されないけど、頑張る。なんとかする。




「はぁーーー…………」




 鳩井は地面に向かって、さっきよりも大きなため息を吐いた。


 え? なんのため息?

 振り回されすぎて呆れちゃった、とか?



「……波木さん」

「はいっ」

「ごめん……もう大丈夫だから」



 鳩井は改めて小さく深呼吸をすると、やたらまっすぐな澄んだ目で私を見た。



「覚悟、決めたから」



 その目に気をとられていると、鳩井が立ちあがって駅の方へと歩き出した。



「……!」



 わたしの手に、指を絡ませて。



< 229 / 320 >

この作品をシェア

pagetop