真面目な鳩井の、キスが甘い。
「えっ……え!?」



 手、手!

 手を繋いで人前に出ることをあんなに躊躇ってたあの鳩井が、こんな路上で、自分から手を……!?

 ていうかこれ、恋人繋ぎだよ!?



 角を曲がって、若者たちがごった返す駅前の繁華街に入った。



「えっ、今のヒナちゃんじゃない!?」

「あ!ほんとだ!」

「待ってあの人、彼氏!?」



 すれ違う人たちの声が聞こえたけど、鳩井は絡めた手をほどくことなく、人混みをかき分けてスタスタと歩いていく。

 よりによって『ヒナ』の知名度が高い若者ばかりのこの街で、恋人繋ぎで歩いてる。


「は、とい、?みんな見てる、けど」

「うん」


 鳩井が繋いでる手の力をギュッと強くした。
 

「大丈夫だから……はやく覚えて」

「?」

「はやく他の手のことは忘れて……この手の感触だけ覚えて」

「……!」



 『いいよ』

 『これから覚えてくれれば』



 絡まった指先に、くすぐったいような、痺れるような感覚が走った。

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