真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ハッと振り返るとそこには、


「晴翔!」


 晴翔が頭をおさえる私を蔑んだ目で見ている。


「チョップ、いる!?」

「ちょうどしやすいとこに頭があったから」

「それ理由になってないから!」
 

 私たちの押し問答を見ていた女の子たちが「澤くんごめんね!」と慌てて道を開けると、晴翔は女の子たちにむかってニコッと笑う。

 
「サンキュー。話してるとこごめんなー」


 どこからかサワサワと爽やかな風が吹いてきそうなイケメンオーラに、女の子たちがトローンと絆される。


「いやいやなにそれ」

「なにが」

「私との態度の差!」

「当たり前だろ。お前と一緒にしたら失礼だろうが」
 

 堂々と私に失礼なことを言う晴翔は、自分の席に向かって行ってしまう。

 女の子たちが「やばい!」「惚れそう!」とか騒いでて、やっぱ晴翔ってモテるんだなぁ、と他人事のように思う。


「おはす~」


 あとからやってきた美愛がくぁ、とあくびしながら気だるげに挨拶した。
 

「美愛。あの子なんなのほんと」

「いやー頑張ったよ晴翔は。めぇーっちゃ頑張った」

「……?」


 何を?と言う前に美愛は私の肩をポンポンと叩いて、私の横をすり抜けていった。

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