真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……」
 

 静かにそこに立っていた鳩井が、私をまっすぐに見て口を開いた。



「おはよう」



 ……!



 『おはよう』


 今まで、みんなの前では目があってもそらされるか、よくて少し笑ってくれるかするだけだったのに。

 クラスメイトのみんなの前で、鳩井が、『おはよう』って……!!


「っ……!!」


 私は感動に震える胸を押さえてグッと涙をこらえる。


「ヒナちゃん、どうしたの……?」


 鳩井と私を交互に見て、女の子たちが首を傾げる。

 
「ちょっと胸が、苦しくなっちゃって……」


 静観していた鳩井が、ふ、と左側の口角をあげて、口パクする。



 か、お。



「……!!」



 私がバッと顔を隠すと、心なしかちょっと嬉しそうな顔の鳩井がその横をすり抜けた。



「く……っ!天国かよ……!!」



 一人悶える私を、女の子たちが再び首を傾げた。


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