真面目な鳩井の、キスが甘い。
 そこで始業のチャイムが鳴った。

 先生が入ってきて朝のHRが始まる。

 先生の話を聞くでもなく聞きながら、今日の放課後へと思いを馳せる。

 今日は久しぶりに鳩井と保健室で会う約束をしてる。

 楽しみで仕方なくてニヤけそうになるのを、クラスメイトに見られないように両手で口元を覆って隠す。

 この夏、私は電波も届かない無人島で映画撮影をしていた。

 夜は無人島の近くにある別の島の民宿にお世話になっていて、そこのギリギリ電波が届く部屋を借りて鳩井に連絡をしたけど、電波がとぎれとぎれで、あんまり聞こえなかった。

 それでも、微かに相槌を打つ鳩井の声が聞こえるだけですっごく癒されて、その日の色んな疲れがすっ飛んじゃって……やっぱり好きだなぁ、と思った。

 毎日電話したかったけど思いのほか撮影は大変で、監督や相手役の俳優さんと相談すること、勉強することもたくさんあったりで、叶わなかった。

 半月前に東京へ戻って来たはいいものの、雑誌の撮影やインタビュー、ネット放送番組などいろんな仕事が詰まっていて、それはもう目が回るような忙しさだった。

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