真面目な鳩井の、キスが甘い。

「ちょっともうやだ～お父さん！お父さん！」


　キャーキャーするお母さんが奥の方に声をかけると、奥から低く落ち着いた声がした。
　

「なんだ、お客さんか？お前たち近所迷惑だから、静かにしなさい」

「ほら！ほら！ヒナちゃん！波木日向ちゃんよ！！」

「んん？」


　ひょこっと顔を出したお父さんが眼鏡をクイッと直した。

　パキッとした美人系のお母さんと違って、とっても素朴で普通な感じのお父さん。

　鳩井パパは不思議そうにしながらもペコッと会釈してくれた。

　無表情でも伝わってくる優しい空気は、鳩井のそれ。

　鳩井、お父さんにもお母さんにも似てる……！


「…あぁ、音色がいつも騒いでる雑誌の？」

「そうよ！そうなのよ！えーやだわ、どういうこと！？」


　お父さんはお母さんにバシバシ叩かれるのをされるがままにしながら「こらこら」と優しく諭している。

　妹ちゃんはお母さんの後ろに隠れてキラキラした目で私を見つめている。

　予想を超えてにぎやかな鳩井家に圧倒されながらも、ちゃんと挨拶をしなくてはと、私はビシッと畏まった。


「あ、あの！私、和音くんとー……」