真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……」




 私は意を決して振り返った。




「鳩井」




 まさか話しかけられると思ってなかっただろう鳩井と隣の尾道くんが、目を丸くして私を見ている。

 私は鳩井の眼鏡の奥にある目を、まっすぐに見返した。



「眼鏡壊しちゃったの、私……?」

「……」



 リコーダーの音と、生徒たちの楽しそうな声が響く喧騒の中。

 勇気を出して私から放たれた言葉は、確実に鳩井に届いたはずだけど、鳩井からの返答はない。

 鳩井は静かに私を見下ろしたまま、息してないんじゃないかと思うくらい硬直している。

 尾道くんは困惑した様子で私と鳩井を交互に見ている。


「……」

「お、おい、鳩井、波木さんが…」


 尾道くんが鳩井をゆすった。

 そしてようやく、鳩井が口を開く。





「なんのこと?」

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