真面目な鳩井の、キスが甘い。
「波木さん、ごめん」

「?」

「……ちょっと変なことしていい?」

「……? 変なこと?」

「ちょっとめちゃくちゃにしたい」


 


 !?




 鳩井から飛び出したとは思えないセリフに、思考停止する。



「ま、っ、? 待って」

「何されてもいいって言ったよね」



 言った、確かに言った。

 でも、ちょっとめちゃくちゃにって、なに!?



 鳩井の、どこまでも見透かしてしまいそうな目が怖くなって逃げようとすると、鳩井に阻まれる。



「……俺も知りたい。波木さんのこと」



 そう言って鳩井は、私の手にキスを落とした。




「もっと、奥深くまで」




 そう言って私を見下ろす鳩井の表情が、これ以上ないくらい色っぽくて



「っ……、」



 なぜか息がしづらくなって、苦しい。

 目が、離せない。


 鳩井が私の右手指に指を絡めて、ベッドに押しつける。

 服と服、シーツに肌の擦れる音が、やけにしっとりと耳をつく。


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