真面目な鳩井の、キスが甘い。
 衝撃で鳩井の眼鏡が吹っ飛んで、壁に激突して割れる。


「っ…、」


 痛そうに顔を歪める鳩井を見てハッとする。


「わぁ!ごめん!えっでも許さん!!え!?なにこれ!?あれ?鳩井だいじょ…あれ…!?」


 自分で叫びながら訳が分からなくなってくる。

 鳩井はさっきまでの辛そうな表情はどこへやら、かなり顔色がいい。

 パニックになる私を静かに眺める鳩井は、やっぱり私の知ってる真面目な鳩井。

 混乱してる私のほうがおかしいような気さえしてくる。


「え?ちょ、はと、鳩井、なに?さっきの、え?治った?もう救急車いらない?…あっ!119だ!」


 今さら救急車の番号を思い出した。

 語呂合わせだと思って必死に『(9)(9)車』の『(しゃ)』にあたる番号が何かを考えていた数分前の自分に伝えたい。とにかく、落ち着け。


「うん……大丈夫」

「そっか!うん!よかった!!え!なんで!?!?」
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