真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……」


 鳩井が私の頭に手を添えて、そっと撫で始める。

 そして、それはそれはちっちゃい声で、
 

 
「…………よしよし」



 昨日した約束を果たしてくれた。



「……」



 こんな棒読みのヨシヨシは聞いたことがなかった。

 

「……」

 

 恥かしさをごまかすためか、鳩井は抱きしめる力をちょっと強くする。
 

 
「……鳩井。もう一回」


 私はこれ見よがしにおかわりをしてみる。

 鳩井は少し躊躇してから、もう一度小さな声で「よしよし」と言ってくれた。

 やっぱり棒読みだった。


「……ぶはっ」


 私は耐えかねて、噴きだした。

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