真面目な鳩井の、キスが甘い。
「え?どこ?」

「外です!外!急いで!この人は私が責任もって保健室に連れていきますので!」

「あら悪いわね。あらあら急がないと…」

「お疲れ様でっす!」

 まだ半ば困惑しながらもパタパタと去っていく先生を、私はビシッと敬礼して見送った。

 先生の姿が見えなくなったところで、私は座り込んで俯く鳩井の顔を覗き込む。

「大丈夫!?」

 私の問いかけに、鳩井は長めの前髪の隙間から熱の孕んだ視線を返した。

 その切れ長の目に、ドキッとした。

 すぐに俯いた鳩井は苦しそうな息を繰り返して、首筋には大量の冷汗を伝わせている。

 その扇情的にも見える苦しそうな様子を、私は見たことがあった。



「……もしかして、昨日のと一緒?」



夢だと思っていた、路地裏での鳩井。

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