真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……!!」

 ザワッと全身の毛が逆立つような、ゾクッと身震いするような感覚。

 それは路地裏で同じように鳩井の顔を覗き込んだ時と同じ感覚だった。

 顔が一気に熱くなって、慌てて目をそらす。

 ヤバい、わたし今、



「……波木、さん」



 上擦った掠れ声に視線をあげると、鳩井の喉ぼとけがゴクリと動くのを見た。



「医療行為……だから」

「……え……?」



 鳩井が呟いた『いりょーこうい』という単語をうまく変換できなくて、聞き返す。

 相変わらず息の荒い鳩井が煩わしそうに眼鏡を外して、切れ長の目で私をとらえた。

 そして少し前のめりになって、私の手に触れた。



 ……息が、できない。



 窓から差し込む太陽の光が鳩井の細められた熱っぽい目に入って、じんわりと光った。




「……人助け」




 そう呟いた鳩井がその手を私の首後ろにまわして、グッと引き寄せた。







「ん」






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