真面目な鳩井の、キスが甘い。
「は……はと、い……離し……っ」


 言ってる途中で、鳩井の右手がするりと耳横を伝って私の首後ろに伸びた。


「ひゃっ、?」

「……ごめん、もう少し」

「へ…は、はと、……っ」


 鳩井は、言葉を紡ごうとした私の口を塞ぐようにもう一度唇を押し付けた。



「~~~……っ」



 そしてまたブワッと熱が上がる。

 その唇の柔らかさに、匂いに、熱に、頭が真っ白になる。

 鼓動が全身に響き渡るほどドクドクと脈打って、訳が分からなくなる。

 自分が自分じゃなくなるような感覚に、怖くなって鳩井のシャツを掴んだ。


「……っ」


 だめだ、なんか、


「ん……ぅ」


 溶けそう……っ



「ん、んん~……っ///」



 私の唇をゆっくり味わうようにキスを続ける鳩井にキャパオーバーして、鳩井のシャツを引っ張ってギブアップをアピールすると、ようやく鳩井の唇が離れた。



「……ごめん、大丈夫?」

「へ、だ、大丈夫って……」


 こっちのセリフだよって言おうとした私は、鳩井の表情に言葉を飲み込んだ。


「……」


 私は顔色のいい鳩井に聞いた。


「……治った?」

「……ごめん」


 まるで何事もなかったかのようにすん…としてる鳩井の謝罪が、私の質問を肯定したようだった。

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