真面目な鳩井の、キスが甘い。
 だからさっき正気に戻った松下先生も困惑してたんだ……。

「俺はここで保健医の傍らこの体質の研究をしてる。元々鳩井は俺の患者で、俺がこの高校に来たのも鳩井に研究の協力をしてもらいたかったから。つってもまーこいつ頑固で、全然手伝ってくれねぇけど」


 鬼塚先生が鳩井のおでこに軽くデコピンすると、鳩井が少し顔をしかめる。


「……で、なんだ?〝波木さん〟には催眠が効かないって言ったか?」


 先生がペンをカチッとならしてメモを取り始めると、鳩井がこくりと頷く。


 催眠って何?って顔をしてると、鬼塚先生が資料をめくった。

 そこにはイラスト付きの説明文。


「口付け依存体質者は、催眠術ができるっつー特徴がある。その時あったことを忘れさせられる、まぁ都合のいい力だな。発作の時に出るフェロモン物質が関係してるとされてるが……この辺はまだ解明されてない」

 あ、あれだ。鳩井が私の目元を手で覆って、急に眠くなったやつ。

 ……ん?


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