真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……うん。なるほどな」


 先生は何かを察したらしい。

 そして口元に手を添えて考え込み始める。


「鳩井はどうして催眠にかかってない波木を食べようと思った?」

「……」


 先生の問いに鳩井は、中指で眼鏡を直してから答えた。


「……そこにいたから」









 ( ^ω^ )








 ……そこに、いたから?

 確かにそこにはいましたが

 あっ、そこに山があったから的な?理由はない、的な??

 私のキッスの価値、その程度ですか?鳩井くん?(泣)





「……へー」


 鬼塚先生が射抜くような目を鳩井に向けていて、鳩井は無表情で机の何もないところを見つめている。


「……お前ら、付き合っちゃえば?」

「ゴホッ!」


 先生からの突拍子もない提案に、むせる。


「え!?なん、なん、なにを言っ…!?!?」


 立ち上がる私に対して鳩井は相変わらず無表情で先生を見ている。


「口付け依存体質は思春期に発症して大人になるにつれ自然治癒していくんだが、その間は投薬か、キスしてその欲を満たすしかない。パートナーがいれば生活に支障をきたすこともほとんどない……が」

 鬼塚先生は鳩井の頭に手を置いた。

「こいつはクッソ真面目でな。あんまり色恋をしたがらない。だからいつも顔色が悪い。そんで倒れるまで我慢しちまう」

 鳩井は表情一つ変えずに先生に頭をガシガシされるがままにしている。

「だから波木。人助けと思って付き合ってみたらどうだ。鳩井はクセは強いが悪いやつじゃねぇし」

「え、え?つ、つつ、」


 鳩井と私が、付き合う!?


「ないです」


 鳩井がきっぱりと否定した。

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