真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ……ん?


「次、発作のとき近づかれたら多分……我慢できない」


 その時、鳩井の耳が真っ赤になってることに気がついた。

 それが私の顔に伝染する。


 『うま』とか『やば』とか言ってたのは

 美味しかった、から……?





「……っ」





 あ、やばい、やばいやばい

 あっつい。

 プスプス……って頭から煙があがってそう。



「…そろそろ戻らないと。行こう」

「あ、そ、そうだねそうだね……!」



 鳩井はこちらに目を向けることなく歩き出して、私もその後ろをついていく。



 そっか……そっかぁ。

 鳩井、私の唇、美味しいんだぁ……。


「……」


 何か喋ってないと死んじゃうはずの私が、なかなか冷めそうにない顔を俯かせて鳩井の後ろをひたすら無言でついていく。

 階段を登り始めると、鳩井の一定の速度で揺れるズボンの裾から白くて細い足首が見え隠れした。

 私はそれをぼーっと見ながら、いつもだったら二段飛ばしで行く階段を一段ずつ登る。


 鳩井は、晴翔みたいな体育会系とは違う。

 ひょろっとしててナヨッとしてて、人差し指で押したら倒れちゃいそうに儚い。


 3ヶ月前、私はそんな鳩井を隣の席からよく眺めていた。

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