真面目な鳩井の、キスが甘い。
「日向の気持ちを全知全能の美愛ちゃんが知らないとでも?」

「え、ま、待って、私話したこと一回もないよね……!?」

「ないねーでもわかるよー席替えした後かなーり落ち込んでたもんねー。この世の終わりみたいな顔してたもんねー」

「えぇ……知ってたの……?」


 恥っず…!!


「え、どうしよ、みんなにバレてる?他の人にもバレてる!?」

「んー日向はわっかりやすいけど、相手が意外すぎるからみんな気付いてないんじゃないー?」

「意外……そうだよね、意外だよね……」


 今だって鳩井、窓際で姿勢正しく私が絶対読まないだろう難しそうな本読んじゃってるもんね。


「なにがあったか知んないけどさー感傷に浸ってる場合じゃないんじゃない?」

「え」

 美愛はおもむろに私の手の甲にペンで落書きをしながら言った。

「鳩井くん、華がないから目立たないだけで実は地味っ子たちにモテるからねー」

「え!?そうなの!?」

「何考えてるかわかんないけどさーなよっとしてる割に物怖じしないし、誰に対しても態度変わんないでしょー。そういう人ってモテるよー」

「……」

< 56 / 320 >

この作品をシェア

pagetop