真面目な鳩井の、キスが甘い。
「ちょっと待って」

「あ?」

「好かれるのが怖いってことは、鳩井は『好き』って言われたらその人が無理になるって、こと……?」

「んー……まぁそうなるか」




 あっ




「ほ、ほぇー」




 ……っぶねぇぇええええ




「なんだその気の抜けた返事は」

 鬼ちゃんの静かなツッコミを聞きながら、私は大量の冷や汗を噴き出した。

 あっぶな!前回うっかり好きって言いそうになっちゃってたよ私!!

 鳩井にもっと距離置かれるところだった!いや、もう十分距離置かれてんだけど!一億光年先くらいに距離置かれるところだった…!!


「いやー大変だぁーはは…」


 動揺を隠しきれない私は、ロイヤルじゃないミルクティーの入ったカップをカタカタと震わせながら口に運ぶ。

 そんな私を鬼ちゃんがコーヒーを置いてじっと見ている。


「……?」


 その顔、普通の人だったらちびってるよ?


「鳩井が好きな相手だったら無理じゃないだろうけどな」

「……」


 鳩井が、好きな相手……?


「そんな人、この世に存在するの?」

「鳩井だって人間だぜ」

「……ほぇー」


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