真面目な鳩井の、キスが甘い。
 鳩井の、好きな人かぁ……




 『鳩井くんと幸村さん、同じ図書委員でしょ?人しれず距離縮めてっかもよー』




 ズキッ


「うっ」


 私は胸をおさえてバタッと机に突っ伏した。


「?どうした」

「……嫌だぁー……」

「何が」


 私は窓の外を見た。


「…………雨」


 都合よく雨が降り出していた。

 鬼ちゃんの奥にある窓には点々と雨の雫が模様を作っていって、私の顔の横のミルクティーからはふわふわと湯気が立ち上っている。


「あー、雨は嫌だな」


 窓の外を眺める鬼ちゃんは、本当に思ってるのかわからない声のトーンで呟いた。

 ……なんか今の気持ち、この湯気みたいだ。

 フッと吹いたらどこかに消えちゃうのに、モワモワ、と次から次へと立ち上ってくる。


 猫舌の私が、息を吹きかける気になれないのはなんでだろう。




 ……はやく冷めないかな。


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