真面目な鳩井の、キスが甘い。
「鳩井!鳩井!生きてるか!?」

 駆け寄って頬をぺちぺち叩いてくるのは尾道。

「生きてる、生きてる」

 痛いけど生きてる、さすがに。

 だから大袈裟に涙目で呼びかけるのやめて。

 ……と思いつつ動けない、情けない自分。

「悪い鳩井!お前いつも良いとこにいるからパス出したくなるんだよ……!ほんとごめんな」

 いや、それどう考えても澤くんのせいじゃない。

「良いとこにいてごめん……」

 今度からはなるべくいい感じに良くないところにいよう。

「鳩井……!だからあんなに無理するなよって言ったじゃないか……!!」

「え?うん」

 尾道が横たわる僕を仲間の最期を看取る刑事みたいにいたわり始めた。

「おい晴翔!なにしてんだよ!鳩井を殺す気か!!」「そうだぞ!お前がしてるのは虐めだ!リンチだ!殺人だ!!」

 チームメイトたちが寄ってたかって澤くんを責め始めた。

 その必死さは普段から完璧にかっこいい澤くんへの嫉妬を発散してるようにも見える。


「う……うわぁぁぁあ鳩井ごめんんん俺はパスを出したかっただけなんだぁぁあ!!」

 それを真に受けて涙目になる澤くん。良い人すぎる。

「いや、澤く 「死ぬなぁぁぁああ!!」

「……」

 これ以上心配かけると本当に救急車を呼ばれかねない、そう懸念してだるくて重たい体をなんとか起こす。
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