真面目な鳩井の、キスが甘い。
「こっ、こんなタイミング自分でもどうかと思うんだけど……っ、でも、今言っちゃわないと……その、これから一生勇気が出ないような気がしてて……っ」

「……うん」

 さっきよりも顔を真っ赤にして、肩にグッと力の入った涙目の幸村さんに、タオルを鼻に押し付けたまま向き合う。

 胸に、チクチクと何かが刺さる。



「あの……、は、鳩井くんの事が……っ、す、すす好きです……!!」




 ミチミチと、鈍い痛みが胃を痛めつけた。



「……」



 痛みに気を取られて返事できないでいると、幸村さんの体が緊張してどんどん力んでいくのが分かる。

 ……はやく彼女に、言ってあげないと。



「…………ありがとう」



 彼女の小さな肩が揺れて、もう心が折れるけど、彼女のためだ、となんとか奮い立たせて続ける。
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