真面目な鳩井の、キスが甘い。
「痛……ったー……」


 静かな保健室で1人、うずくまって痛みに耐える。

 はやく終わればいいのに。こんな面白くもないホラー映画。

 こないだたまたま見たホラー映画のラストはどんなだったっけ。

 ……そうだ、眩しい光の中で主人公が想いをよせるヒロインが来て──……







 コンコン






 !






 ちょうど雲間から太陽が顔を出して、カーテンの隙間から僕の目元を目掛けて光線を浴びせた。

 必然的に視界が真っ白に眩しくなって、目を細める。

 そして、扉がガラッ、と音を立てて動いた。


「失礼しまー……」





 ……はた。


 眩い光の中から出てきたその人と、目があった。





「…………っ」







 波木さんって、こんなに綺麗な人だったっけ。




 僕は、声帯の震わせ方を忘れた。







「っ、キャーーーーーー!!」


「!?」


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