真面目な鳩井の、キスが甘い。
 『あれ!?救急車って何番!?9、9……しゃってなに!?しゃって何番!?!?』



「…………く」

「!?」


 こらえきれずに俯いて肩を震わせ始めた僕に、波木さんが困惑する。



「よ……呼ばなくて、いいから……救急……車……っ」



 なんとか笑いを漏らさないようにするけど……

 ……駄目だ、面白い。


「は……鳩井……?」

「くふっ」

「え」


 普通にしてるとテレビで見るアイドルなんかよりずっと可愛い波木さんの、あのときの必死な表情は、芸人顔負けだった。

 俯きながら、我慢できずに口角を思い切り上げそうになった時だった。

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