真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ごまかすようにした質問に、波木さんが大袈裟に肩を震わせた。


「……?」


 しちゃいけない質問だっただろうか。


「あ、や、えっとー、私は、そのー……」


 波木さんは目をぐるぐるさせて言葉を探している。

 これは波木さんが何か嘘をつこうとしている時のクセ。

 授業中、明らかに波木さんの方から聞こえたお腹の音を、私じゃありません、と呟いた時の顔と一緒だ。


「……もしかして心配してきてくれた……?」

「へ!?」


 波木さんがビクッとして顔を赤くさせる。


「……いやー、その、えっとー……まぁ、……そう、かも」
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