真面目な鳩井の、キスが甘い。
 波木さんの勢いに押されて、波木さんごとベッドに倒れ込む。





「っ……、ん」





 手のひらから落ちた錠剤が床に散らばる音を聞きながら、必死に混乱する頭で考えを巡らせる。


 なんだ?何が起こってる?

 なんで波木さんの方から?

 おかしい、だって波木さんには……


 そう思いながら波木さんのぎこちないキスを受け止めてしまう。


「んっ……ぅ」


 体が、全部が、喜んでしまう。

 飢えていた体が、すごい勢いで波木さんを吸収しようと熱くなる。



 ……あ……あー……やばい、やばい

 凄い美味しい、やばい



 とろけるような味に、考える力が失われていく。

 カラカラになった体に潤いが行き渡るように、一気に満たされていく。

 波木さんの緊張した唇や甘い匂い、自分とは全然違うすべすべの柔らかい肌がすぐそこにあって……僕の中の何かが、溢れ出す。

 波木さんの綺麗にウェーブした髪が過敏になった僕の耳をくすぐった。そして、




「……〜〜〜っ、」




 理性が飛んだ。

< 83 / 320 >

この作品をシェア

pagetop