真面目な鳩井の、キスが甘い。
 波木さんは懸命に笑顔を作っているけれど、硬直する僕に見られながら真っ赤な顔で泣きそうにしている。

 2人きりの保健室に、異様な空気が流れる。


 ……ていうか、キスする友達……って、


「……駄目だよ、澤くん怒るでしょ」

「え?」


 波木さんが目を丸くするので、僕も「え?」と返す。


「澤くんって……晴翔?なんで今、晴翔の話?」

「え……?だって、」


 爽やかでかっこいい、波木さんの幼馴染で、


「波木さんの彼氏……だよね」

「え!?」


 波木さんが大袈裟に驚いた顔をした。


「……?」

「えっ、違う!違うよ違うよ!?彼氏じゃないよ!!」

「え」

「晴翔はただの幼馴染だよ!ただのいけすかない爽やかイケメン野郎だよ!ただの!」


 波木さんが褒めてるのかけなしてるのか分からない説明をした。


「ただの……幼馴染……」

「うん!」


 付き合ってるって噂、デマだったんだ。
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