真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……」



 私に何か求めるのを諦めたのか、鳩井は最近ツヤの増した黒髪をさらりと揺らして顔を傾けた。

 そして切れ長の目を細めて、いつものセリフを言う。



「……目、閉じて」

「あ、は、わ」



 鳩井は「はい、わかりました」もまともに言えなくなった私に、グッと顔を近づけた。



 わ、わ……っ



 私はギュッと目を瞑る。



 そして、





「っ」





 唇が重なる。





「……っ」





 優しく、触れてるだけ。

 柔らかい唇が触れてるだけ。

 だけ、なのに……っ





「~~~……っ」





 腰が砕けそう〜〜〜……!!





 ほどなくして、ちゅ、と音がして名残惜しく唇が離れた。

 鳩井がはー……と幸せそうな息を小さく吐いてから目を開けて、ゆっくりと視線が絡み合う。



 やばい、やばいやばい

 たぶん今、わたし、顔に出ちゃってる。



 鳩井、好き好き好き〜……って。





「……っ」





 あぁ〜、もう言っちゃう?言っちゃおっかな?なんか今なら雰囲気も最高だし?

 もう言いたくて仕方ないから言っちゃおうかな!?

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