真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ……そう。私は、好きな人にこう言われた。



 『波木さんに好きな人ができたら言って』



「……」



 『俺もそういう相手ができたら言う』

 『それまでの関係ってことで』



「っ……、」



 私は両手の拳を握って目の前の机に勢いよくドンッ!と振り下ろした。


「お互いを好きにならないの前提かよ!!」


 記憶の中の鳩井に、盛大にツッコミを入れた。


 鬼ちゃんはそんな私を見てゲラゲラ笑っている。鬼だ。


「ヒー、おっもしれぇー。変なとこ鈍いよなぁアイツ。まーこれから好きになって貰えばいいんじゃねー?」

「簡単に言わないでよぉ……」

「大丈夫だって、波木の持ち前のセクシーがあれ、ばっ!?」

 私は人の不幸を揶揄う鬼ちゃんに渾身の膝カックンをお見舞いした。

 体勢を崩した鬼ちゃんはよろけて持っていた書類をひっくり返す。

「おっ前、そういうとこだぞ!」

「どーせノンセクシーですよ!まな板ですよ!ひよこくらぶですよ!!うわぁぁあん!!」

 いつか絶対お金持ちになって、豊胸手術してセクシーむんむんのモッテモテお姉さんになってやるんだからー!!


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