小児科医の恋愛事情 ～ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ～

イブは日勤、クリスマスは夕方からの当直に調整して、なんとか時間を確保した。

これなら、１９時までにはケーキを持って帰れるはずだし、夜に飲んだとしても次の日はゆっくりできる。

１５時か･･。

昼休憩はメシ抜きにして、オーダーしていた指輪を取りに行ってきたし、ケーキも予約済みだ。
彼女からも、１９時にケータリングを手配したとメッセージが来た。

しかし･･。
肝心のプロポーズの言葉がまだ決まっていない。

入院中の子供たちが年末年始に一時帰宅できるかどうか、見極めるための検査やカンファレンスが重なり、なかなか考える時間が取れなかったのだ。

最悪･･先延ばしにするという手段もある。
彼女には、クリスマスパーティーをするとしか言っていないわけだし。

とはいってもな･･。

ブブ･･。
胸元の医療用スマートフォンが振動している。

「はい、西島です」

『ＮＩＣＵ(新生児集中治療室)の伊藤です。西島先生、新生児の救急搬送に同乗お願いできますか？　いまＮＩＣＵのドクターが手一杯で･･提携先の高浜教授のところに搬送されるようなので、先生にお願いできればと』

「承知しました。すぐ向かいます」

通話を終え、医局長に状況を伝えてから医局を出た。
ＮＩＣＵで申し送りをしてもらい、担当の看護師と一緒に専用の搬送車に乗り込む。

「頑張れ･･高浜教授に診てもらおうな」

俺は保育器の中の赤ちゃんに、小声で話しかけた。